ピロリ菌と呼ばれる細菌が口から侵入して胃の中で増殖し、慢性的な炎症が起こります。胃粘膜で慢性的な炎症が起こることで粘膜が萎縮し、胃がんのリスクが上がります。WHO（世界保健機関）の専門組織「国際がん研究機関」によると、全世界の胃がんの8割程度はピロリ菌感染によって起こっているとされています。

幼少期に井戸水などを飲むことが感染原因だとされています。そのため、上下水道が発達した先進国で感染者は減少していますが、日本では未だに一定の感染者がいらっしゃいます。幼少期の生活環境などが影響することがあるため、胃がんの家族歴がある方や、同居人が胃がん患者様の場合は、ご自身が感染している可能性もあります。

ピロリ菌感染が判明した場合、除菌治療を実施します。抗生物質2種類と、その効果を促進する胃酸分泌抑制剤の合計3種類のお薬を、1週間飲んで頂きます。1回目の除菌治療で成功する確率は70～80%くらいです。1回目の治療に失敗した場合、抗生物質の1種類を別のものに変えて2回目の除菌治療を行います。2回目までの治療で97～98％の方は除菌に成功すると言われています。

除菌に成功すれば胃炎や胃潰瘍の再発予防に繋がり、胃がんなどを発症しづらくなります。また、ピロリ菌は周囲の方へ感染する可能性があるため、除菌によって次世代への感染も防げます。

ピロリ菌の感染有無を調べる検査と、陽性だった場合の除菌治療は保険適用となります。胃の症状が長引いている方は、一度当院までご相談ください。

ピロリ菌感染検査は、胃カメラ検査での際に組織採取をする検査と、その他の検査に分けられます。除菌治療を保険適用とするためには、胃カメラ検査によって確定診断が必要です。

胃カメラ検査で胃炎や胃・十二指腸潰瘍などの特定の病気の診断を受けた場合や、検査で採取した組織を検査してピロリ菌感染陽性と分かった場合は、健康保険が適用されます。

胃カメラ検査を受けないと、ピロリ菌検査と除菌治療は保険適用となりませんので、ご注意ください。また、3回目以降の除菌治療も、健康保険が適用されません。

保険診療では、クラリスロマイシン（クラリス）やアモキシシリン（ペニシリン系抗生剤）といった抗生物質を使用しますが、その他の抗生物質を使用する場合は保険適用とはなりません。アレルギーなどが理由でこれらのお薬を使用できない場合、自費診療で別のお薬を使うことができますので、ご希望の方は一度ご相談ください。